石笛

「いわぶえ」と読みます。縄文時代から日本にある楽器で、古代から神事の祭具として使われてきたそうです。オカリナのような楽器ですが、オカリナのようにたくさん穴があるわけではなく、またオカリナのように中が空洞になっているわけでもなく、穴が通っているわけでもないんです。雨だれによって岩に穴があく話は良く聞きますが、この楽器の穴は貝が住み着いて掘られていったそうです。人の手が加わることなく、自然の力で作り上げられた楽器です。思ったよりも甲高い音で驚きましたが、清らかな音というよりはお腹の底に響くような音でした。三島由紀夫が「英霊の声」という小説の中で
古代の湖の中をのぞいて、そこに魚族や藻草のすがたを透かし見るような心地がする。またあるいは千丈の井戸の奥底にきらめく清水に向かって、声を発して戻ってきたコダマをきくような心地がする。
と表現する、まさにそんな音でした。現在、石笛を奏でられるのは世界で一人だけなんだそうです。そんな横澤和也氏の演奏を聞けたのは幸いでした。